脊椎脊髄疾患 脊椎脊髄疾患
脊椎脊髄疾患
 

 このたび一般の方々に向け、腰痛、肩こりなど日常生活で経験する頻度の高い症状とこうした症状を引き起こす代表的脊椎脊髄疾患を紹介するサイトを開設しました。

主な症状    
● 腰痛 ● 歩行障害 ● 頚部痛・肩こり
● 手足のシビレ感 ● 上肢痛 ● スポーツ障害
● 手足の運動障害・麻痺 ● 下肢痛  
     
主な疾患    
● 腰部椎間板症 ● 骨粗鬆症・脊椎圧迫骨折 ● 脊椎腫瘍(せきついしゅよう)
● 腰椎椎間板ヘルニア ● 頸椎椎間板ヘルニア ● 脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)
● 脊椎分離症・すべり症 ● 頚椎症・頚髄症 ● 脊椎脊髄損傷
● 腰部脊柱管狭窄症 ● 頚椎後縦靱帯骨化症 ● 脊髄空洞症
● 腰椎変性すべり症 ● 胸髄症(ヘルニア、脊椎症、靱帯骨化) ● 化膿性・結核性脊椎炎
● 腰椎変性側弯症 ● 脊柱側弯症  
     
主な治療法    
● 主な保存療法 ● 主な手術療法  



  主な症状
● 腰痛
   
>> 参考図書

 腰痛は、日常生活の中でとても頻繁に見られる症状です。小さい子供さんには少ないですが、いわゆる老若男女に幅広く起こります。腰痛はいろいろなことが原因となります。最も多い原因は、腰椎(腰骨)の一部である椎間板や椎間関節と呼ばれる部位の退行性変化(老化)によって起こるものです。これに不良(悪い)姿勢が重なると腰痛がさらに起こりやすくなります。その他、腰痛の原因となる特別な病気として、腰椎椎間板ヘルニア脊椎分離症・脊椎すべり症腰部脊柱管狭窄症などがあげられます。また、時には、悪性腫瘍(癌)の転移化膿性脊椎炎脊椎カリエス(結核)、外傷(圧迫骨折など)も原因となります。 一般的な腰痛の経過はわりと良好で、1〜2週間で痛みは和らぐのが普通です。 しかし、起き上がれないほど激しい痛みがある場合、痛みが長引き快方に向かわない場合、腰痛以外に下肢症状(足の痛み・しびれ)が出る場合などには特別な病気の可能性があるので注意が必要です。 腰痛の治療に際しては、原因を的確に診断することが大切ですので、脊椎脊髄病専門医への早めの受診をお勧めいたします。

腰痛

(長屋郁郎監修:整形外科疾患病態説明アトラスより引用)

広報委員 熱田裕司
(旭川医科大学整形外科)



● 手足のシビレ感
手足のシビレ感

 手足のシビレは脊髄の病気や坐骨神経痛で発生します。脊髄や末梢神経が傷ついておきる現象です。肩こりや頚肩腕症候群、肘の腱鞘炎、下肢の筋肉痛などでも一時的にシビレを感じることがありますが、それらは様子を見てもよいでしょう。糖尿病やある種のビタミン欠乏症、遺伝性感覚欠損、閉塞性動脈硬化症(歩行すると足がシビレる)などのシビレ感は内科的治療などが必要です。一方、頚椎症後縦靱帯骨化症脊髄腫瘍腰椎椎間板ヘルニア腰部脊柱管狭窄症などでは、脊髄や坐骨神経が圧迫されてシビレ感や感覚障害が発生するので、脊椎脊髄病専門の整形外科的診断と治療が必要です。肘や手関節部で神経が痛んでシビレが起きる場合(紋扼性神経症)も同じです。シビレ感の程度や範囲が拡がるような場合にも脊椎脊髄病専門の整形外科的検査が必要になります。

広報委員 川原範夫、岡本義之
(金沢大学整形外科)



● 手足の運動障害・麻痺

 手がしびれて、上手に動かせない、つかめない、もっと具体的に言えば、箸が使いにくくなった、ボタン掛けがしにくくなった、財布から硬貨を取り出しにくくなった、などの症状は、手指の巧緻運動障害といわれ、頚髄障害の重要な徴候です(図)。

手足の運動障害・麻痺

(長屋郁郎監修:整形外科疾患病態説明アトラスより引用)

また、肩を挙げたり、肘を曲げたりする力が弱くなった、握力が弱くなった、などの筋肉の力が弱くなる症状も、筋力麻痺によるもので脊髄神経障害のひとつです。
 足の方では、歩くのがよろけて不安定、階段を下りる時に手すりが必要、つま先立ちができにくくなった、スリッパが抜けやすくなった、などの症状が重要な脊髄障害の徴候です(図)。

手足の運動障害・麻痺

(長屋郁郎監修:整形外科疾患病態説明アトラスより引用)

 これらの運動障害・麻痺の主な原因は、脳あるいは背骨の中を通っている脊髄神経、または脊髄から枝分かれしている脊髄神経根の障害で、頚椎症後縦靭帯骨化症黄靱帯骨化症脊椎腫瘍脊髄腫瘍椎間板ヘルニア腰椎分離症、腰椎すべり症腰部脊柱管狭窄症などで起こります。これらの症状が、何のきっかけもなく起こり、次第に強くなっている場合は、早めに整形外科専門医、特に脊椎脊髄病医を受診し、正しい診断を受け、早期の治療を開始する必要があります。

広報委員 植田尊善
(総合せき損センター整形外科)



● 歩行障害

 歩行障害の原因は、下肢の病気とそれ以外の病気に分けて考えることが出来ます。下肢の病気としては、関節の変形が代表的なもので、関節痛が特徴です。一方、下肢以外の病気による歩行障害は、背骨の病気による神経障害と下肢の血流障害が主な原因です。通常は、神経障害による歩行障害が多く、臀部から下肢の後面を通り下腿部の下まで放散する痛みとしびれで歩くことが出来なくなります。安静時には全く症状が無く、歩くと痛みやしびれがでて長く歩くことができなくなり、歩行と休息を繰りかえす歩行障害を間欠跛行といいます。この間欠跛行は、腰部脊柱管狭窄による神経障害や閉塞性動脈硬化症による血行障害の特徴的症状です。歩くと下肢が痛い・しびれるといった症状があるときには専門医の受診をお勧めします。

歩行障害

広報委員 紺野慎一
(福島県立医大整形外科)



● 上肢痛

 頚椎椎間板ヘルニア頚椎症後縦靭帯骨化症などの頚椎の病気が原因で頚の神経根(脊髄から出た神経の枝)が圧迫され、上肢の痛みを生じることがあります。この場合、頚を後ろに反らせたり、左右どちらかに傾けることにより症状が悪化する場合があり、肩甲骨の内側に痛みが走ることもあります。頚椎装具、薬物療法、牽引療法、ブロック療法などの保存療法で大半は改善します。3〜6か月以上の保存的治療で改善しない場合に初めて手術療法を考えます。その他に、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩など)、第1肋骨と鎖骨の間で腕神経叢、鎖骨下動脈が圧迫される胸郭出口症候群、肩手症候群などでも上肢にも疼痛をきたすことがあります。また頚髄の腫瘍や肺尖部の肺癌が頚の神経根を圧迫し、上肢の疼痛やしびれを生じることもあるので注意が必要です。いずれにしてもまず整形外科専門医を受診することをお勧めします。

上肢痛

(長屋郁郎監修:整形外科疾患病態説明アトラスより引用)

広報委員 徳橋泰明
(日本大学整形外科)



● 下肢痛

 下肢の痛みの原因には、股、膝や足の関節の障害や下肢の骨や筋肉に異常がある場合もありますが、腰からの神経が原因となっている場合も少なくありません。特に歩行や動作時に下肢痛を感じる場合は、腰部脊柱管狭窄症(腰の神経の通り道である脊柱管が狭くなっている状態)や腰椎椎間板ヘルニアなどの重大な疾患を合併していることが多く、整形外科専門医を受診する必要があります。また、寝ている時にも下肢痛がある場合は、背骨の腫瘍(癌の転移など)や神経の腫瘍、炎症などを合併していることが多く、脊椎脊髄病専門医の診察を受けて下さい。従って、腰痛に下肢痛を伴っている場合はいずれにせよ正確な診断をつけた上で治療を受けることが、早く痛みを直すことにつながります。特に足の力が入りにくくなったり、排尿や排便が以前と違うといった症状を伴っている場合には、神経の麻痺がすでに生じています。診断や治療が遅れると麻痺が治らない場合がありますので脊椎脊髄病専門医に診察をできるだけ早く受けることをお勧めします。

下肢痛

(長屋郁郎監修:整形外科疾患病態説明アトラスより引用)

広報委員 土井田稔
(神戸大学整形外科)



● 頚部痛・肩こり
   
>> 参考図書

 頚部痛や肩こりは、若い方からお年寄りの方までの幅広い年齢層で認められる愁訴です。その原因には様々なものがあり、年齢によっても原因が異なってきます。若い方の場合は筋肉の血行障害や疲労、関節の炎症によるものが多く、中・高齢者の場合は頚椎(首の骨)や肩関節などの加齢性変化(老化)によるものが多いと言われています。しかし、中には頚椎椎間板ヘルニア頸椎症性脊髄症後縦靭帯骨化症悪性腫瘍(癌)の転移などの疾患が原因となっていることがあり、放置した場合手足の麻痺などの重篤な症状へと進行していくこともあります。したがって、症状が持続する場合や手足のシビレ、手の使いにくさ(巧緻運動障害)、歩きづらさ(歩行障害)などを自覚した際は必ず整形外科専門医を受診し原因をしっかりと調べることが必要です。原因がはっきりすれば適切な治療法を決定することができ、原因によっては劇的な症状の改善が得ることもあります。頚部痛や肩こりは「治らないもの」、「たいしたことのないもの」として放置せず、脊椎脊髄病専門医を受診し、正しい診断に基づいた適切な治療を受けることが大切です。

頚部痛・肩こり

(長屋郁郎監修:整形外科疾患病態説明アトラスより引用)

広報委員 千葉一裕
(慶應義塾大学整形学科)



● スポーツ障害

 脊柱(背骨)は、文字通り身体の中核を成すものです。従って、スポーツ活動により様々な障害が発生します。そのひとつとして腰痛があげられます。スポーツ人口の10〜15%は腰痛を自覚していると報告されています。腰痛を引き起こす障害で代表的なものが腰椎分離症です。これは腰椎の一部で骨が分離した状態であり、原因としては繰り返す運動によって腰椎に生じる疲労骨折と言われています。小・中学生のスポーツ選手に好発し、腰痛や下肢痛を生じます。スポーツの種別は様々ですが、特に野球やサッカー選手に多いようです。この病気は早期に診断できれば装具による治療などで分離した部分を癒合させることも可能です。この年齢のお子さんが腰痛を訴える場合には早めに専門医の受診が必要です。その他、スポーツによって発症・悪化する疾患として、腰椎椎間板症腰椎椎間板ヘルニア頸椎症頚椎椎間板ヘルニアなどや、頸髄損傷などの外傷があります。痛みを和らげるだけの安易な対応はスポーツ選手生命を短縮するばかりか、後に重篤な機能障害を招く可能性もあります。早期の診断と適切な治療のためには専門医の受診をお勧めします。

スポーツ障害

腰椎分離症、MRI(T2強調像)で分離した部分が白く見えています(矢印)。

広報委員 藤本吉範
(広島総合病院整形外科)



 
  主な疾患
● 腰部椎間板症

 椎間板は脊柱(せぼね)の構成成分の1つであり、ブロック状の椎骨と椎骨の間に存在し、脊柱に可動性を持たせながらクッションとしての役割も担っています。椎間板は中央の髄核と外側の線維輪で構成されています。髄核は水分を多く含むゲル状の物質からなり、線維輪は丈夫なコラーゲン線維からなる帯状のシートが何枚も重なった構造をとっており、中央の髄核を取り囲んでいます。椎間板は常に力学的負荷を受けており、10代後半から加齢やストレスなどで髄核の水分が減少して変性という現象(すなわち老化)が起こってきます。こうした老化現象によって椎間板の支持性やクッションとしての機能が低下すると、周りの神経を刺激したり、靭帯、関節や筋肉に負担がかかり、腰痛の原因になることがあります。こうした椎間板の変性による腰痛が生じた状態を腰部椎間板症と呼びます。症状は急性、慢性の腰痛で体動時(特に前屈位)に痛みが強くなることが多く、下肢症状や膀胱直腸症状は伴うことはまれです。腰椎椎間板症は、診察だけでは診断が難しい場合もあり、レントゲンでも大きな異常が認められない事も少なくないため、MRIという画像検査が必要になる場合もあります(図)。

腰部椎間板症

 治療は鎮痛剤の内服やコルセットなどの保存療法が基本となり、ほとんどの場合症状が軽減しますが、時に日常生活が制限される様なひどい腰痛が長期に続き、手術が必要になる場合があります。その時は傷んだ椎間板を取り除き、骨盤から取った骨を移植する脊椎固定術を行います。手術の適応を決めるためには入院して椎間板造影という検査を行う必要があります。いずれにせよ、MRIで椎間板に異常が見られたからといって必ずしも全例に腰痛が出るわけではなく、腰部椎間板症の診断には経験と専門知識が不可欠ですので、腰痛が長引く場合は一度脊椎脊髄病専門医の診察を受けることをお勧めします。

広報委員 千葉一裕・渡辺航太
(慶應義塾大学整形外科)



● 腰椎椎間板ヘルニア

 椎間板は、背骨(脊柱)を構成する椎骨と椎骨の間に存在し、背骨に加わる衝撃を緩和するクッションの役割を担っています。椎間板はその中心部にゼリー状の髄核と呼ばれる柔らかい組織とその周囲に線維輪と呼ばれる丈夫な外層で構成されています。髄核は子供や壮青年ではゼリー状ですが、年齢とともにみずみずしさがなくなってきます。この椎間板に強い圧力が加ったり、線維輪の弾力性が低下すると、亀裂が生じ、椎間板の内容物が押し出され突出します。これを椎間板ヘルニアと呼びます(図)。突出した椎間板が神経を押さえると下肢に痛みが生じることがあります。症状は、急性の激しい腰・下肢痛です。症状が進行すると下肢の力が入りにくくなり、蹴つまづきやすいなどの運動障害が起こります。また、稀ではありますが、馬尾と呼ばれる腰椎部の神経が、ヘルニアにより強く圧迫され傷つくと排尿や排便の障害を生じることがあります。 痛みやしびれなどの症状は、腰の前屈動作(前かがみ)や椅子に座った時に強くなることが多いです。診察では、下肢伸展挙上テスト(あお向けに寝て膝を伸ばした状態で片方ずつ足を持ち上げていきます)にて、ヘルニアで神経根が圧迫されると、70度未満の挙上で下肢の痛みを訴えることが多いです。画像では、単純エックス線検査では椎間板や神経の描出が困難なためMRIによる検査が必要です(図)。

腰椎椎間板ヘルニア

図:MRI検査:椎間板が後方に突出し、神経を圧迫している。
赤の矢印で示しているのが椎間板ヘルニアである。

 特殊なタイプのヘルニアもありますので、椎間板ヘルニアに対しては脊椎脊髄病専門の整形外科専門医(脊椎脊髄病学会指導医)の診断と治療が必要です。通常は手術をせずに保存的治療(薬、注射、理学療法など)で治癒する場合が多いですが、適切な治療にも関わらず下肢の痛みが治らない場合、下肢の麻痺が進行する場合や前述の排尿、排便障害がでてくるような場合には、手術が必要です。切開せずに行える治療として、「レーザー治療」が行われることもありますが、「レーザー治療」でよくなるヘルニアのタイプは非常に限られていますので、受けられる前に整形外科専門医によく相談することが大切です。

広報委員 土井田稔
(神戸大学整形外科)



● 脊椎分離症・すべり症

 脊椎分離症というのは、脊椎の関節突起間部といわれる部位で本来つながっているべき骨の連続性が絶たれてしまっている(分離している)疾患です。主に5番目の腰椎(腰の骨)に生じ、スポーツを行なう学童期に多く発症することから原因は腰にかかる繰り返しの外力による疲労骨折と考えられていますが、

脊椎分離症・すべり症

一部遺伝も関与していると考えられています。本疾患の主な症状は腰痛ですが、運動時には腰痛があっても普段はあまり症状がないことが多いため、放置される例も少なくありません。しかし、早期にコルセットやギプス固定などの適切な保存的治療を行うことで骨折した部分の癒合が期待できます。早期診断にはX線だけでなく、CTやMRIなどの検査が必要です。したがって、お子さんに運動時の腰痛が生じた場合は早期に整形外科専門医を受診することが大切です。分離症が放置された場合、隣り合った脊椎との間の安定性が損なわれてしまうため骨と骨との位置関係にずれが生じることがあります。この状態を脊椎分離すべり症と言います。すべりがひどくなると下肢の痛みやシビレが出現することもあり、時に手術が必要となることもあります。特に骨の成長が不十分な若年者にすべりが生じやすいと言われています。したがって早期の適切な診断と治療が重要です。腰痛が長引く場合や下肢の痛み・シビレが出現した場合、早めに脊椎脊髄病専門医を受診することをお勧めします。

広報委員 千葉一裕
(慶應義塾大学整形学科)



● 腰部脊柱管狭窄症

 背骨には神経の通り道である脊柱管と呼ばれる孔があります。長い年月の間、体を支え続けていると背骨が変形して脊柱管が狭くなってきます。腰椎部で脊柱管が狭くなった状態を腰部脊柱管狭窄と呼びます。腰部脊柱管狭窄症は、50歳代以降から徐々に増えてきます。脊柱管が狭くなると、そのなかを走っている神経(馬尾や神経根)が圧迫されて、坐骨神経痛と呼ばれる下肢の神経痛やしびれ、麻痺(脱力)が発生します。時には、両下肢のしびれの他に、股間のほてり、排尿後にまだ尿が完全に出し切れない感じ(残尿感)、便秘などの膀胱・直腸症状が発生します。これらの症状は、主に歩行時により惹起されます。そのため腰部脊柱管狭窄症では、長距離を続けて歩くことができなくなり、歩行と休息を繰りかえす間欠跛行という状態になります。歩くと下肢の痛みやしびれが強くなってくる、あるいは下肢の症状に排尿の異常を伴うような症状があれば腰部脊柱管狭窄が疑われますので専門医に診て貰った方がよいでしょう。

広報委員 紺野慎一
(福島県立医大整形外科)



● 腰椎変性すべり症

 変性すべり症は、腰の骨(腰椎)が前後にずれてしまう病気で、中年以降の女性に好発し、第4番目の腰椎によく認められます。原因は明らかではありませんが、多くは加齢とともに腰椎の椎間板や関節・靭帯がゆるみ、腰椎が不安定性(ぐらつき)をともなってずれるようになり、脊柱管(神経の通り道)が狭窄することで神経が圧迫されて、腰痛下肢の痛み・しびれが生じます。進行とともに症状は変化し、初めは腰痛が主体ですが、進行すると脊柱管の狭窄による間欠跛行(長い距離を歩くと痛み・しびれが強くなり、しゃがみこむと症状が軽減する)を認めたり、末期になると安静時にも下肢の痛みやしびれが出現するようになります。治療は保存療法が原則です。腰痛が強い場合は、コルセットを装用し日常生活で腰に負担のかかる動作を避け安静にすることが重要です。消炎鎮痛剤などを内服し、痛みが軽減してきたら腰部のストレッチングや筋力訓練をおこないます。下肢の疼痛やしびれが強い場合は、神経ブロック療法などを試みますが、これらの保存療法で改善の得られない症例では除圧術や脊椎固定術などの手術が必要となることがあります。適切な治療が行われれば、治療後の経過は比較的良好ですので、早めに脊椎脊髄病専門医の診察をおすすめします。

腰椎変性すべり症

(長屋郁郎監修:整形外科疾患病態説明アトラスより引用)

広報委員 千葉一裕
(慶應義塾大学整形外科)



● 腰椎変性側弯症

 変性側弯症は加齢に伴って椎間板や椎間関節が変性して椎体を支える力が弱くなり、脊柱が側方に曲がってくる(側弯)状態です。主な初期症状は腰痛ですが、骨棘などの椎体変形や脊柱のねじれ(回旋変形)を伴ってくると神経根や馬尾を圧迫して、下肢のしびれ、痛みや筋力低下が生じる場合も少なくありません。また、側弯が進行すると腰痛は悪化し、体幹のバランスも悪くなり、日常生活に支障を生じます。治療は、症状が軽度の場合はコルセットなどで保存的に治療しますが、症状が強い場合は手術が必要になります。その際、変形した骨や軟骨を削り、症状を起している神経根や馬尾の圧迫を取る(除圧術)だけでよくなる場合もあります。しかし、骨を削ったために後でさらに変形が進む場合もあるので、側弯の程度や神経の圧迫の状態によっては脊椎に骨盤から取った骨を移植して固める脊椎固定術が必要な場合もあります(図)。

腰椎変性側弯症

その場合には特殊な金属のスクリューやロッドで背骨を支える必要があることが多く、特殊な技術が必要となります。したがって、治療法の選択、固定範囲など専門性の高い知識が必要になりますので、脊椎脊髄病専門医の診察を受けることをお勧めします。

広報委員 千葉一裕・渡辺航太
(慶應義塾大学整形外科)



● 骨粗鬆症・脊椎圧迫骨折

 骨粗鬆症は骨の新陳代謝のバランスがくずれて、新しい骨を作るために骨をとかす働き(骨吸収)が新しい骨を作る働き(骨形成)を上回り、骨量が減少した状態をいいます(図1、図2)。

正常な骨

図1:正常な骨

骨粗鬆症

図2:骨粗鬆症

 骨粗髪症になると骨がすかすかになるだけではなく、骨の質も変化するため、骨が脆くなります。骨の代謝は女性ホルモンの影響をうけるため、女性では閉経後に多く見られます。我が国では約800万人の患者がいると推定されていますが、実際に治療を受けているのはそのうち25%程度(約200万人)と考えられます。骨粗鬆症では骨がもろくなるため、軽微な外傷で脊椎・手関節・大腿骨などの骨折が起こりやすくなります。脊椎に生じる骨折は四角い形をした脊椎が潰れる圧迫骨折といわれるものです(図3)。

脊椎圧迫骨折

図3:圧迫骨折

 骨粗髪症が進行すると、明らかな外傷がなくても圧迫骨折を生じる場合があります。骨折すると背中や腰の激痛を生じます。潰れた脊椎は元の形には戻らないので潰れた状態で骨がついていきます。このため、痛みがとれた後にも背中が丸くなる(円背、猫背)、身長が低くなるといった状態が残ります。日本人女性の骨粗鬆症性の圧迫骨折の有病率は、外国人女性と比較して高いことが報告されており、一度、骨折を起こすと次々に起こりやすくなることから、初期治療が重要と考えられています。骨の量は比較的簡単に計測できるので、病院にて検査を受け現在の自分の骨量を知ることが第一歩になります。骨量の減少がみられる場合、骨の量を増やしたり骨を強くする作用の薬物を投与します。またすでに圧迫骨折を生じてしまっている場合は、コルセットやギプスなどを使用して痛みを和らげたり脊椎変形の防止につとめます。適切な処置を病院で行わないと骨がつかなくなり痛みが持続する場合があります。圧迫骨折では保存治療が原則ですが、病院によっては骨折した部位に人工の骨(カルシウムペースト)を注入する治療を行っているところもあります。圧迫骨折の一部では、骨折した骨や脊椎変形のため脊椎の中を通る神経が障害され麻痺を生じる場合があり、手術が必要になることがあります。適切な薬剤治療を受け食生活や運動など生活上の注意点に留意することで、骨量減少をおさえ骨折の危険性を減少させることができますので、早めに脊椎脊髄病専門医を受診することをお勧めします。ただし、歯の治療の際は、薬剤の継続使用について歯医者さんとご相談下さい。

広報委員 千葉一裕・名倉武雄
(慶應義塾大学整形外科)



● 頸椎椎間板ヘルニア

 椎間板はブロック状の椎骨と椎骨の間に存在し、脊柱に可動性を持たせながらクッションとしての役割も担っています。椎間板は中央の髄核と外側の線維輪から構成されています。髄核は水分を多く含むゲル状の物質からなり、線維輪は丈夫なコラーゲン線維からなるシートが層状に重なった構造をとっており、中央の髄核を取り囲んでいます。椎間板は常に力学的負荷にさらされていることから、10代後半から変性(老化)が始まり、髄核の水分含有量の減少や線維輪に小さな断裂や亀裂が生じます。その亀裂から髄核が脱出した状態が椎間板ヘルニアです(図1)。

頸椎椎間板ヘルニア

図1:頚椎MRI 椎間板が後方に突出して脊髄を圧迫している

 頸椎椎間板ヘルニアは頸椎の疾患の中で頻度の高い病態の一つであり、中年以降に多くみられます。症状はヘルニアの突出方向によって異なります。一般的には左右どちらかに偏って突出することが多く、脊髄から分岐した片側の神経根(神経の枝)を圧迫することにより、片側の頚部から肩および肩甲骨・腕などの痛みやしびれを生じ、筋力低下を呈することもあります。一方、中央に大きく突出した場合には脊髄の本幹を圧迫することにより、手指の細かな運動がしづらい、歩行障害や膀胱直腸障害(頻尿、尿閉、尿失禁など)などの症状が出現します。治療は保存的な治療が中心ですが、脊髄や神経根の圧迫による神経障害が出現した場合には早期に手術を要する場合もあります。神経障害を長期間放置した場合には回復が困難になってしまうこともありますので、上記の様な症状を自覚した場合には脊椎脊髄病専門医の受診をお勧めします。

広報委員 千葉一裕・辻崇
(慶應義塾大学整形外科)



● 頚椎症・頚髄症

 頚の背骨(頚椎)自体あるいは椎間板が傷んで骨棘(こつきょく)という骨・軟骨が増生するため、頚が痛くなる状態を頚椎症と言います。うなじ(項部)や肩甲部にも鈍い痛みがでることがありますが、温熱療法や軽い運動療法で様子を見れば結構です。この状態が進行し手足のシビレや痛み、運動麻痺や排尿障害がでてきますと脊椎脊髄病専門医の診察がまず必要になります。骨棘の発生部位やその大きさをレントゲン像で調べ、脊髄や神経症状の程度と脊髄変形をMRIなどで検査する必要があります。この様に神経麻痺や運動麻痺がでてきた場合を頚髄症と診断します。軽度のシビレ感や感覚障害、痛みならば薬物療法などで様子を診ることもありますが、その症状がいっこうに良くならず加えて運動麻痺や筋力低下がでてきますと手術が必要です。手術は脊椎脊髄病専門の整形外科医(脊椎脊髄病学会外科指導医)を受診し、手術時期や方法、入院要領などを相談すべきでしょう。手術は前方法(前方除圧固定術)と後方法(脊柱管拡大術)に大別されますが、何れの方法でも入院は10日〜3週程で技術的にもほぼ確立されたものになっています。

頚椎症・頚髄症

広報委員 川原範夫・岡本義之
(金沢大学整形外科)



● 頚椎後縦靱帯骨化症

 頚椎の椎体の後面で、脊髄に接している後縦靱帯が骨化して、脊髄を圧迫する病気です。進行すると脊髄圧迫による頚部や肩の痛み、手足のしびれ、手指の運動障害、歩行障害などを生じます。40〜50歳台の男性に多いとされています。原因については遺伝子レベルでの研究が行われていますが、はっきりした結論は出ていません。診断は頚椎の単純X線写真で可能ですが、脊髄の圧迫の程度をみるにはMRI検査が有効です。症状が軽い場合は、装具をつけるなどして安静を保ったり、薬物療法などの保存療法を行います。手指の運動障害や歩行障害が出てきた場合には、手術が必要となる可能性が高いので、日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医への受診を勧めします。手術は前方から骨化を取り除き、骨を移植して固定する方法(前方固定術)と、後方から椎弓を形成して脊髄の圧迫を解除する方法(椎弓形成術・脊柱管拡大術)があります。また症状がないか軽くても転倒などの怪我で脊髄麻痺を生じることがあるので注意が必要です。なお厚生労働省特定疾患として認められており、医療費の公費負担を受けることができる場合がありますので自治体や医療機関にお尋ねください。

頚椎後縦靱帯骨化症

(長屋郁郎監修:整形外科疾患病態説明アトラスより引用)

広報委員 徳橋泰明
(日本大学整形外科)



● 胸髄症(ヘルニア、脊椎症、靱帯骨化)

 脊髄の神経は部位によって頚髄、胸髄および腰髄(馬尾)に分けられます。何らかの原因により胸髄の神経が圧迫を受け神経障害が出現した状態のことを胸髄症(きょうずいしょう)といいます。胸髄症は比較的稀な病態です。その原因として、胸髄を取り囲む胸椎(背骨)は胸郭によって安定し可動性が少ないため、頚椎や腰椎と比較すると加齢性変化が出現しづらい為であると考えられています。胸髄症の原因としては、椎間板が突出することにより発症する胸椎椎間板ヘルニア、加齢性変化によって脊椎が変形し骨の棘(とげ)が出現することによって脊髄を圧迫する変形性胸椎症、脊椎に存在する靭帯(後縦靭帯や黄色靭帯)が骨に変化してしまうことにより脊髄を圧迫する後縦靭帯骨化症や黄色靭帯骨化症があります(図1、2)。

MRI 骨化した黄色靱帯が後方から脊椎を圧迫している
骨化部分が後方から脊髄を圧迫している

図1:MRI 骨化した黄色靱帯が後方から脊椎を
圧迫している

図2:骨化部分が後方から脊髄を
圧迫している

 一般的に中年以降に発症し、最初の症状は下肢のシビレ感や脱力であることが多く、徐々に体幹部にまで及び、体幹部の帯状の痛みを生じることもあります。症状が進行してくると歩行障害や膀胱直腸障害(頻尿、尿閉、尿失禁など)が出現します。最初の症状が下肢だけの場合、診断が難しいため、腰椎疾患として治療され、診断までに時間を要することも稀ではありません。原因不明の下肢症状が継続する場合には脊椎脊髄病専門医の受診をお勧めします。

広報委員 千葉一裕・辻崇
(慶應義塾大学整形外科)



● 脊柱側弯症
側弯症患者のX線写真

側弯症患者のX線写真

 脊椎は正面から見ると通常まっすぐですが、これが10度以上曲がっている場合に側弯症と診断します。側弯には原因が不明のもの(特発性)、先天性のもの、他の病気に伴って生じるもの(症候性)などがありますが、思春期に側弯が明らかとなる思春期特発性側弯症が最も多く見られます。女児に多く見られます。側弯になると両肩の高さ、肩甲骨の出っ張り方、ウェスト、お辞儀したときの肋骨の出っ張りなどが左右で異なってきます。自治体により異なりますが、小学校高学年あるいは中学の学校検診でこれらの点がチェックされます。側弯の疑いがもたれた場合は近くの整形外科でレントゲンをとり、治療が必要な側弯であれば側弯治療を行っている専門病院に紹介してもらうとよいでしょう。側弯症は成長期に進行することが多く、成長の停止とともに進行速度も遅くなります。しかし時には大人になったあとも進行する場合もあります。一定の角度以上で、進行の可能性が高い側弯には装具療法が行われます。側弯の進行を食い止められる治療法はこの装具療法のみで、マッサージや牽引、徒手矯正は無効とされています。一般的には脇から下のプラスティック製の装具を装着しますが、最初はお風呂や運動時などをのぞいてできるだけ一日中つけるようにいたします。成長が止まるにつれ装具の装着時間を短くしていき、成長がほぼ完全に止まった段階で完全に外します。側弯の角度が45度を超える場合には、整容の問題の改善や呼吸機能の低下、背中の痛みの発生を防ぐために手術が必要となる場合があります。いずれにせよ側弯症の治療は高度の専門知識を要しますので、脊椎脊髄病専門医(特に側弯症専門医)の受診をお勧めします。

広報委員 千葉一裕・松本守雄
(慶應義塾大学整形外科)



● 脊椎腫瘍(せきついしゅよう)

 脊椎腫瘍はいわゆる脊柱(せぼね)にできる腫瘍(できもの)です。腫瘍は脊椎原発のものと悪性腫瘍(がんなど)の転移に分類されます。脊椎原発性腫瘍は種類も豊富で若い方からお年寄りの方までの幅広い年齢層にみられますが、頻度はまれです。一方でがんから脊椎に転移するため転移性腫瘍は、中・高齢者に多い傾向にあります。原発巣として、肺がん、乳がん、前立腺がん、甲状腺がん、腎細胞がんなどの頻度が高く重要です。脊椎腫瘍の症状は、腫瘍によって骨が壊されることで脊椎の支持性(体を支える機能)が失われることにより生じる症状と脊髄・馬尾・神経根が腫瘍により圧迫されて生じる症状があります。前者には首や背中、腰の痛みがあり、この痛みは座位や立位で増強します。後者は初期には手・足の体幹のシビレや痛みなどがあります。このシビレや痛みは安静時にも感じられる場合があり、更に進行すると手・足の運動麻痺、尿や便の排泄障害などが生じてきます。診断は近年の画像検査の進歩により比較的容易で、適切な診断と治療(手術療法、放射線照射、がんの治療など)により良好な経過をたどるケースも多くあります。しかし、高度な麻痺に陥ってしまった場合、回復は困難となります。したがって、頚や背中、腰の痛みが持続する場合や手足のシビレ、手の使いにくさ、歩きづらさなどを自覚した際は必ず脊椎脊髄病専門医を受診し原因をしっかりと調べ、可及的早期に適切な治療を受けることが大切です。

脊椎腫瘍(せきついしゅよう)

図 がんの転移性脊椎腫瘍
左:MRI画像で矢印の白く写っている部分が腫瘍に侵された背骨です。
右:PET-CT画像では同じ部位(矢印)に集積(レインボー色)がみられます。

広報委員 千葉一裕・石井賢
(慶應義塾大学整形外科)



● 脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)

 脊髄腫瘍とは脳からの信号を手や足に伝達する神経の束である脊髄およびその枝にできる腫瘍です。脊髄腫瘍は脳腫瘍より数が少なく、一年間に10万人当たり1〜2人程度の発生頻度といわれています。腫瘍の発生する部位によって硬膜外腫瘍、硬膜内髄外腫瘍、髄内腫瘍の3つに分類されます(図1)。硬膜内髄外腫瘍は脊髄を外から圧迫する形で発育し、麻痺や感覚障害、膀胱直腸障害といった症状を呈します。発生する腫瘍の種類としては神経鞘腫や髄膜腫といった良性のものが多く、ゆっくりと成長するため、腫瘍がかなり大きくなるまで症状が出ない場合もあります。脊髄が高度に障害された場合は、その回復は困難であり早期の発見と治療が不可欠です。髄内腫瘍は脊髄の中に腫瘍が成長し、残存した正常脊髄を内側から圧迫します。やはり麻痺や感覚障害、膀胱直腸障害といった症状を呈します。発生する腫瘍は上衣腫、星細胞腫、血管芽細胞腫などがみられます。これらの腫瘍も確実に発育するため手術治療(腫瘍摘出術)が原則となります。しかし、正常脊髄と腫瘍の区別が困難で全摘出が出来ないこともあり、機能的および生命予後は組織の種類に左右されます。手術に際しては顕微鏡下での繊細な技術を必要としますので早期の脊椎脊髄病専門医への受診をお勧めします。

脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)

図1:脊髄腫瘍の局在による分類

広報委員 千葉一裕・中村雅也
(慶應義塾大学整形外科)



● 脊椎脊髄損傷

 脊髄とは背骨の中のトンネルのような所(脊柱管)に存在し、脳と末梢神経をつなぐとても大切な神経の束です。手足を動かす、あるいは手足の感覚を脳へ伝える、また排尿や排便にも関与しています。たとえば、交通事故にあい、大きな外力が頚椎に働くと頚椎が脱臼したり骨折するばかりでなく、その中を通っている脊髄を傷つける可能性があります。脊髄が傷つくと脊髄損傷といい、四肢体幹、膀胱直腸に様々な程度の麻痺を生じます。日本における1990-92年の疫学調査では、人口百万人当り40人の新規脊髄損傷が発生しました。日本全体で言うと、約5000人の方が脊髄損傷となる計算になります。受傷原因としては、交通事故、高所からの転落事故、転倒、スポーツ事故の順番です。麻痺は運動、感覚の消失した完全麻痺から、何らかの運動感覚の残存した不全麻痺に別れます。不全麻痺の程度も、歩行可能な場合から車椅子となる場合まで様々です。また、麻痺の程度は受傷の瞬間が最大であり、時間経過とともに回復していくことは少なくありません。但し、初期に完全麻痺例では回復の可能性は、現時点では3-5%と極めて低いものです。しかしながら、例え車椅子生活となっても、車の運転をはじめ、自立した生活が可能となる割合は高いのです、そのためには、急性期から医師のみならず看護師、理学療法士、作業療法士などが一体となって継続した治療を行わねばなりません。褥瘡や尿路感染などの脊髄損傷に頻発する合併症を予防しながら、リハビリテーションを一貫して続けることが極めて重要となります。また、脊髄損傷の方が多く、一緒に入院治療を受けられている環境は、孤独感を和らげる効果があります。従って、脊髄損傷においては、症例を計画的に集約した病院で急性期から自宅復帰、復職まで治療を受けられることが理想でしょう。今後はそのような方向を日本全体で考える必要があります。

広報委員 植田尊善
(総合せき損センター 整形外科)



● 脊髄空洞症

 脊髄空洞症とは、色々な原因で起こりますが、簡単に言えば、脊髄という神経組織の中に水(脳脊髄液)が貯まり、脊髄の中に「ちくわ」のように空洞ができる病気です。この貯留した水溜まりが、大きくなると脊髄を中から圧迫するので、手足のしびれ運動障害、排尿障害などの脊髄障害が起こる可能性があります。診断は、以前はなかなか困難でしたが、現在ではMRIにより、容易に確定診断ができるようになりました。脊髄空洞症の原因は様々ですが、小脳が先天的に下っていて脳脊髄液の流れが妨げられたり、脊髄損傷後や脊髄炎後のやはり脳脊髄液の還流障害を基盤として発生すると考えられています。治療法として、首や体幹を大きく動かしたり、腹圧をかける動作を一時中止すると改善することもありますが、多くは手術療法の対象となります。手術法には、大後頭孔減圧術など脊髄液の流れを改善させる方法(髄液バイパス術)と空洞内に細いチューブを入れ貯まった水を空洞外へ流すシャント術があります。適切な時期に手術を行えば、空洞症を縮小させ進展を予防する事が可能です。顕微鏡を必要とする繊細な手術ですから、脊椎脊髄病指導医に御相談下さい。

広報委員 植田尊善
(総合せき損センター 整形外科)



● 化膿性・結核性脊椎炎

 化膿性・結核性脊椎炎は脊柱(せぼね)に細菌(ばいきん)が付着し骨の感染(骨髄炎)を起こした状態です。発症年齢は中・高齢者が大部分です。特に免疫力が低下した高齢者に発症することが多いため、近年の高齢化社会の到来によりその頻度は高くなっています。一般的な症状は発熱や骨髄炎による病巣部の痛みですが、膿がたまり脊髄・馬尾神経を圧迫した場合は進行性の手足の麻痺を呈することもあります。菌の種類によっては発熱を伴わない場合も珍しくありません。診断は血液検査や造影剤を用いたMRI画像検査により比較的容易ですが、脊椎腫瘍との鑑別が重要です。一般に早期の適切な診断と治療(抗生物質投与や手術療法など)により比較的良好な経過をたどりますが、高度に骨が破壊されている場合や特殊な細菌が原因の場合は治療に難渋することもあります。頚部や背部から腰部の痛みが持続する場合や手足のシビレ・痛み、肋間神経痛、歩きづらさなどを自覚した際は必ず整形外科専門医を受診し原因をしっかりと調べ、可及的早期に正しい診断に基づいた適切な治療を受けることが大切です。

化膿性・結核性脊椎炎

図 化膿性脊椎炎
左:レントゲン画像では細菌で侵された部分(矢印)が破壊されています。
右:MRI画像では細菌で侵された部分(矢印)の背骨が黒く写っています。

広報委員 千葉一裕・石井賢
(慶應義塾大学整形外科)



 
  主な治療法
● 主な保存療法

1.頚椎疾患の保存療法
 頚椎部のさまざまな病変によって頚部痛、肩甲部痛、上肢の痛み、しびれが生じますが、これらの症状は筋肉の持続的な緊張を生じ、筋炎、筋膜炎の原因となり、さらに症状を悪化させる可能性があります。頚椎は日常生活において、胸椎や腰椎に比較し、運動頻度が高く、運動範囲が大きいという特長があります。さらに、頭部をのせる支柱の役割があるため負担がかかりやすく、症状が首の動きにより増強すると考えられます。

1) 安静と薬物・装具療法
 
頚椎カラー装具

頚椎カラー装具

 頚椎疾患の保存療法としてはまず安静と薬物療法が第一選択と考えられています。一番の頚椎の安静位は顎を軽く引いた状態で前上方を向いた姿勢をとる状態であり、この姿勢を保持することは大切です。しかし、痛みが強い場合には、頚椎装具を装着すれば、頚椎の安静、制動に非常に有効であり、痛みが軽快します。鎮痛剤、筋弛緩剤の投与や、神経障害に対するビタミン剤の投与も多くの場合有効です。
2) 理学療法
 
頚椎牽引

頚椎牽引

 持続する症状に対しては、温熱療法、牽引療法などの物理療法が有効なことも少なくありません。温熱療法は疼痛や、筋肉の痙攣を軽減させ、血行改善が期待され、筋肉の拘縮が有る場合に特に有効と言われています。牽引療法は頭部による頚椎への荷重を軽減し、運動を制限して安静を保ち、硬直した筋肉を緩める作用があると考えられています。慢性に持続する症状には運動療法が行われます。これは患者自身が自ら積極的に行う治療法です。拘縮や過緊張をきたした筋に対するリラクセーション、弱くなった筋力の回復、筋肉相互間のバランスの乱れを整えるなどの効果があると考えられています。複雑な運動より、単純な体操、運動が効果的といわれておりますが、いずれにせよ短期間では十分な効果は期待できないため、根気強く継続する必要があります。
3) 神経ブロック療法
   こうした初期治療が無効の場合、あるいは痛みが激しい場合は神経ブロック療法を含めた種々の注射療法を行うこともあります。痛みの伝導路を遮断する目的で行われ、一時的、時には半永久的に痛みを和らぐ患者さんが少なくありません。
 

 これらの保存療法は全ての方に同様に有効というわけではありません。ご本人に合った治療を担当医の先生と相談しながら進めることが重要です。また、治療効果が不十分のまま漫然と継続すべきではありません。明らかな筋力低下、筋肉の痩せ、歩行障害、書字、つまみ動作の不具合など症状がある場合は手術が必要なこともあるため、早めに脊椎脊髄病専門医を受診しMRIなどの精密検査を行うことをお勧めします。

広報委員 川原範夫
(金沢大学整形外科)

 

2.腰痛症に対する保存療法
 腰痛症とは、腰部の痛みと運動制限を認め、通常下肢のしびれや麻痺などの神経学的所見を認めない状態の総称です。急性に生じた場合には、一般的に『ぎっくり腰』と言われています。痛みの原因は、筋肉、靭帯、椎間板、椎間関節にあるとされていますが、いまだ不明の点も多く残されています。時には他の腰椎疾患の前ぶれとして生じている場合があります。治療は急性、慢性の腰痛症によって多少異なりますが、保存療法が中心となります。

1) 安静、生活習慣の改善
   痛みは腰にかかった負担によって筋肉や関節部で起きた炎症のため生じるとされています。そのため、まずは安静により腰にかかる負担を減らすことによって、回復が期待されます。また日頃からストレッチや筋力訓練を行ない、腰部周囲の筋肉のバランスを整えることは腰痛の再発予防につながります。腰痛が消失するまで安静を保つ必要はなく、動ける範囲で日常生活を維持したほうが、治療効果が高いことが科学的に証明されています。
2) 装具療法
   局所の安静を保つことで、痛みの軽減や早期の回復を期待し、腰椎装具を使用する場合があります。装具には様々な種類がありますが、一般的に腰痛症の場合には軟らかい簡易なもので十分です。装具着用の目的と装着期間につきましては、病状により異なりますので、担当医とよく相談して下さい。
3) 内服・外用薬治療
   一般的には鎮痛目的に非ステロイド系抗炎症薬を、痛みにより緊張した筋肉を弛緩させるために筋弛緩薬を使用します。また、湿布や塗り薬など外用薬も適宜使用します。薬による治療は、特に急性の腰痛症に有効なことがわかっています。
4) ブロック療法
   トリガーポイント(発痛点)に局所麻酔薬や抗炎症薬を使用する事によって痛みを治療する方法です。トリガーポイントをブロックしますと、交感神経系の異常な興奮が抑えられ、局所の血行が改善され、発痛物質(痛みを誘発する物質)が抑制され、痛みが緩和されると考えられています。
 

上記の治療は神経症状を認めない一般的な腰痛症に対してのものです。腰痛の中には、内科的な疾患を含んだ他の疾患がひそんでいる場合がありますので、時には外科的な治療が必要になる場合もあります。まずは脊椎脊髄病専門医を受診し、確実な診断を受けることをお勧めします。

腰痛 保存療法

広報委員 川原範夫・林寛之
(金沢大学整形外科)

 

3.頚肩腕症候群の保存的治療
 頚肩腕症候群とは首や肩や腕にかけての痛みや凝り、シビレなど様々な症状を認める状態を総称して呼ばれています。本来人間は4つ足動物であり、それが立って歩くようになったため頸部(頸椎)は4〜6kgの頭を支え、下垂している腕を上方へ引き上げるといった役割を担うようになりました。そのため、加齢性の変化や不良姿勢のもとに上肢を酷使することによる疲労のため、効率よく頭を支えることや、腕を吊り上げることが出来なくなり、様々な症状が現れます。頚肩腕症候群に対する保存的治療には以下のものがあります。


1) 生活習慣の改善
   頚肩腕症候群は、姿勢の悪さや、長時間の作業など生活習慣によって生じている事が多いため、原因と考えられる生活習慣を改善する事が必要です。枕についても適切な高さや形状は個人個人で異なりますから、担当医にご遠慮なくご相談ください。また、疲れやストレスをためないことも重要です。
2) 物理療法
   温熱療法等によって頚部周囲筋群や周囲軟部組織を温めることによって、血流を増加させ、筋肉の凝りや緊張をほぐします。また牽引療法として、頸部を垂直方向に牽引することにより、緊張している筋肉や筋膜を弛緩させ、痛みを軽減させます。その他、頚部のストレッチングや筋力強化訓練は柔軟性の向上や筋力低下を防ぎ、頚椎疾患の治療や予防に重要です。スポーツの可否については病状によって異なりますので担当医とご相談ください。
3) 内服治療
   筋弛緩作用のある薬によって、筋肉の凝りや緊張を軽減させます。非ステロイド系抗炎症薬は痛みの原因となる炎症を軽減させることにより、鎮痛作用が得られます。ストレスなど心的要因が原因と考えられる場合、不安や緊張を緩和させるために抗不安薬を使用することがあります。
4) ブロック注射
   トリガーポイント(発痛点)に局所麻酔薬や抗炎症薬を使用することによって、痛みを治療する方法です。トリガーポイントをブロックすると交感神経系の異常な興奮が抑えられます。そして局所の血行が改善し、発痛物質が抑制され、痛みが緩和すると考えられています。
トリガーポイント注射
 

 一方、頸椎椎間板ヘルニア変形性頸椎症、胸郭出口症候群、心身症など確定診断がついた場合には、それに対しての個別の治療が必要であり、場合によっては外科的な処置が必要な場合がありますので脊椎脊髄病専門医を受診し、確実な診断を受けることをお勧めします。

広報委員 川原範夫・村上英樹
(金沢大学整形外科)

 

4.腰部脊柱管狭窄症に対する保存療法
 腰部脊柱管狭窄症は神経の通り道である脊柱管が先天的または後天的に狭くなり、脊髄神経根や馬尾を圧迫し、下肢の疼痛、感覚障害などの多彩な症状をもたらす病気です。神経根の束である馬尾が圧迫を受けた場合、本疾患特有の症状として間欠性跛行が生じます。これは歩行の持続に伴って両下肢のしびれ、痛み、脱力が生じ、やがて歩行不能となる症状であり、腰を掛けた状態での休憩やしゃがみ込むことで、症状は軽快します。姿勢変化の関与が非常に重要で、自転車や乳母車を押すなど、腰を前かがみにした姿勢では症状が出ないことが多いです。
 腰部脊柱管狭窄症による下肢の筋力低下や感覚鈍麻といった麻痺の症状、著明な歩行障害、頻尿・便秘といった膀胱直腸障害などが出現した場合には、手術の適応となりますが、腰や下肢の痛みが主な場合はまず保存療法を考慮します。

1) 薬物療法
   腰や下肢の痛みが強い場合、消炎鎮痛薬やビタミン剤の内服が有効なことがあります。また、最近、プロスタグランジンというお薬が圧迫されている神経の血流を改善させ、しびれや間欠性跛行を軽減させる効果があることが分かってきました。症状に応じて点滴や内服で投与します。こうしたお薬の効果には個人差が大きいため、主治医と良く相談の上、服用してください。
2) 安静
   急激な腰痛、下肢の痛みには、初期治療として、安静が有効です。しかし、長期間、床に伏すことは、循環機能・呼吸機能の低下、褥創、関節の拘縮、筋力の低下といった2次的弊害が大きな問題となるため、痛くない範囲で動くことも大切です。
3) 運動療法
   体幹の屈曲運動を中心としたストレッチや筋力強化訓練を行います。筋力が強くなることで腰が安定して腰痛、下肢痛の軽減、日常生活の適応性の改善が見込まれます。歩行練習は、過剰に行うとむしろ間欠性跛行が悪化することがあるため、歩行はできる範囲で行い、遠くには自転車や車の使用をお勧めします。決して無理しないことも重要です。
4) 装具療法
   コルセットに代表される装具は、腰椎の反り過ぎを抑えるとともに腰仙椎の支持固定の働きも兼ねており、神経根が圧迫されることによる下肢痛、間欠性跛行といった症状の軽減を目的として使用することがあります。しかし、長期間の使用による体幹筋の筋力低下には注意が必要です。
5) 物理療法
   温熱療法等によって局所の循環が改善され、痛みを誘発する代謝物の除去、筋痙攣の緩和、刺激効果、心的効果などがもたらされると考えられ、時に有効です。
6) 注射療法
   下肢の痛みが著しく強い時は、硬膜外ブロックや神経根ブロックなどの注射療法が有効なことがあります。注射の効果には個人差が大きいため、担当医と良く相談のうえ、適応を決めてください。

広報委員 川原範夫・竹内孝之郎
(金沢大学整形外科)



● 主な手術療法

 背骨の手術には大きく分けて、中を通る神経の圧迫を取り除くためのものと、ぐらついた背骨を固定(安定化)するためのものがあります。手術が必要になるのは、次のような場合です。

1) 椎間板や骨などにより神経が圧迫され、手足の運動や感覚に障害が生じた場合:
  椎間板ヘルニア(頚椎腰椎)、腰部脊柱管狭窄症頚椎症・頚髄症後縦靭帯骨化症など
2) 腰痛や頚部痛が強く日常生活や仕事に支障を及ぼす場合:
  腰椎すべり症頚椎症、椎間板ヘルニア(頚椎腰椎)など
3) 背骨の変形が著しい場合:
  脊柱側弯症、変形性脊椎症、変性側弯症など
4) 腫瘍や感染により背骨が破壊された場合:
  転移性脊椎腫瘍化膿性脊椎炎など

 一般的には、薬物療法や理学療法などの保存的治療を十分に行っても効果がみられない場合に限って手術を行うのが原則です。しかし、重大な神経麻痺が生じたり、腫瘍による背骨の破壊が起きつつある場合などは緊急に手術を行うこともあります。いずれにしても主治医から手術の必要性と合併症の危険性について十分な説明を受け、納得したうえで承諾することが重要です。
 以下に、部位別に主な手術の概要を説明します。

1.頚椎の手術
1) 前方固定術:  神経を圧迫している椎間板や骨のかどを取り除き、その部分に骨を移植して固定するものです。移植には通常、骨盤から取ったブロック状の骨を使います。一般的に手術後1〜3ヵ月程度、頚椎の装具をつける必要があります。頚椎椎間板ヘルニア頚椎症性脊髄症などに行われます。
2) 椎弓形成術・脊柱管拡大術:  脊髄の通る管(脊柱管)が狭くなり、神経を圧迫して、手足のしびれ・痛みや運動障害が顕著になった場合に行います。頚椎症性脊髄症後縦靭帯骨化症などが対象となります。脊柱管の屋根の部分にあたる椎弓を真ん中から左右に開いて脊柱管を広げ、神経の圧迫を取り除く脊柱管拡大術が一般的に行われています。脊柱管拡大術は、このほかにも色々な方法が開発されています。手術後の装具着用期間は1〜2週間程度と短期間です。
3) 環軸椎固定術:  関節リウマチなどの疾患では、第1頚椎(環椎)と第2頚椎(軸椎)がずれて、頚部痛や手足のしびれを起こすることがあります。このような場合は、環椎と軸椎の間に骨移植を行い、ワイヤーやネジを用いて固定する手術を行います。手術後1〜3ヵ月程度頚椎装具を着用します。
2.腰椎の手術
1) 椎間板切除術:  椎間板ヘルニアによる神経の圧迫症状が強い場合に行われます。従来から、背中側から入って椎弓の一部を削り、椎間板を取り除く方法が最もよく行われています。手術後2〜3日目から歩行開始し、入院期間は2〜3週間程度です。
 最近では、小さな傷で手術を行う低侵襲手術が普及してきています。低侵襲手術には、顕微鏡下椎間板切除術(micro-discectomy: MD)と内視鏡下椎間板切除術(micro-endoscopic discectomy: MED)(図)があります。手術の傷は、MDで3cm弱、MEDで2cm弱と小さく、いずれの方法も手術後の痛みが少ないのが特長です。手術翌日から歩行でき、入院期間は5日から1週間程度です。
内視鏡手術

図 内視鏡手術

2) 椎弓切除術:  脊柱管狭窄症などで下肢痛や歩行障害が著しい場合に行います。椎弓を全て切除する広範囲椎弓切除術と、隣り合う椎弓の一部を切除して窓をあけるようにする腰椎開窓術(内側椎間関節切除術)があります。手術後3〜5日程度で歩行可能です。手術後はコルセットを1〜数ヵ月程度着用します。椎弓切除術は、しばしば次に述べる椎間固定術と併用されます。
3) 椎間固定術:  腰椎すべり症などで、椎骨と椎骨の間にずれや不安定性が生じた場合は、椎骨間を固定する必要が出てきます。背中側から入って椎骨と椎骨の間に骨移植する後側方固定術(PLF)、後方侵入椎体間固定術(PLIF)や、腹側から入って骨移植する前方固定術などの方法があります。移植する骨は骨盤から採取します。骨移植に金属による固定(instrumentation)を併用することがあります。固定術は背骨の外傷や腫瘍に対しても行われます。手術後は、コルセットを数ヵ月間着用する必要があります。

3.その他の脊椎手術
1) 胸椎の手術:  胸椎における脊髄圧迫性病変(後縦靭帯骨化症黄色靭帯骨化症椎間板ヘルニアなど)に対しても、前方固定術や椎弓切除術などが行われます。胸椎レベルでの前方固定術の際は、胸を開いて背骨に到達することが必要になります。
 最近、低侵襲手術のひとつとして胸腔鏡(内視鏡)を用いた胸椎前方固定術や病巣掻爬(そうは)術なども行われていますが、熟練した医師により行われる必要があります。
2) 側弯症手術: 脊柱側弯の弯曲角度が大きく(一般的には50度以上)になると矯正手術が必要になります。弯曲の中心が胸椎にある場合は、背中側から入り、金属を用いて背骨を矯正し、さらに骨移植を行う後方固定術が行われます。弯曲の中心が胸椎下部や腰椎にある場合は、腹側から入って、金属により矯正し骨移植を行う前方固定術を行うこともあります。いずれの方法も手術後3ヵ月程度コルセットを装着する必要があります。

広報委員 熱田裕司
(旭川医科大学整形外科)

 
 
   
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